Webサイトで、Audi A1のレビュー記事を読んでいると、しばしば、ライバル車として「FIAT 500」の名前が出てきます。
個人的には「Audi A1」と「FIAT 500」がライバルに思えなかったのですが、車を購入するときのコンセプトであった「個性的で所有していることが楽しくなる車」という観点では「FIAT 500」も魅力のある車なので候補の1つとして考えてみました。
エクステリアデザイン
「FIAT 500」を買うモチベーションとしては、やはりデザインが最も大きいと思います。逆に言えば、デザインが気に入らなかったら、この車を買う意味はないでしょう。
先代の500の雰囲気を残しつつ、より可愛らしさとスタイリッシュさを併せ持ったデザインというイメージがありましたが、実際に先代の500を比べてみると、かなり変わっていることがわかります。
しかし、今の 500 も見ただけで「FIAT 500(チンクチェント)」だとわかる雰囲気を出しているのが、デザインとして素晴らしいとは思います。
インテリアデザイン
インテリアはボディと同色をフロントパネルにあしらい、高級感はないですが、ポップでキュートなイメージです。
こういうセンスは日本車にはないので、運転席に座るのが楽しくなりそうですが、「落ち着き」や「上品さ」はないので、そういうことを求めているのならば、ちょっと方向性が違うかもしれません。
個人的にはビートルを見た時と同じ印象を持ち、「いいんだけどしばらくしらた飽きを感じるかもなぁ」と思いました。
走りと乗り心地
試乗した「500C 1.2 Pop」は 69psとカタログ値としては非力な感じですが、重量が1,030kgと軽いせいか、思ったよりキビキビ走ります。
しかし一番の特徴(問題?)はトランスミッションのデュアロジック。このデュアロジックは、ATモード付5速シーケンシャルと書かれている通り、ATではなくクラッチペダルのないMTといった感じ。ATモードで走る場合、普通のATの感覚で乗ると相当違和感があります。シフトアップの度にクラッチを切り、回転が落ちてしまうので、ガックンガックンしてしまい、この動きに慣れていないとかなり慌てます。MTのようにシフトアップのタイミングでアクセルをタイミングよく離せばある程度スムーズに動きますが、これには少し慣れが必要なのと、渋滞しているときなどは、ちょっと疲れそうだなぁという印象です。
FIAT500には「直列4気筒 SOHC 8バルブ(可変バルブタイミング付)」のエンジンを搭載したものと、「直列2気筒8バルブ マルチエアインタークーラー付ターボ」を搭載したものの2種類があります。
試乗したのは「直列2気筒8バルブ マルチエアインタークーラー付ターボ」を搭載した車種でしたが、カタログを見ると「車で2気筒って大丈夫なんだろうか?」という気分にさせるものの、実際には思ったより普通に走ります。ただし、振動は大きいのかなという印象はありました。
ただ、このクセのあるデュアロジックも、クセのある車を乗りこなすことを楽しく感じる人であれば、むしろ欲しくなる要素の1つかもしれません。しかし、あくまでイージートライブが望みであれば、この車は合わないと思いました。
なんとなく、可愛らしいイメージから、女性に好まれそうな感じですが、かなりクセのある車なので、手軽に車を楽しみたい女性にはむしろ合ってなく、車好きなマニアな男性向けの車という気もします。たまたまかもしれませんが、自分がディーラに行ったときも、男性1人で来ている方が多かったです。
価格
一番安い「500 1.2 Pop」が、199万円、一番高い「500C TwinAir Lounge」が 284万円です。Audi A1も割高だという声が多いですが、FIAT 500 も内容からすれば割高さを感じるものの、AudiA1に比べて「割高な車だ」という声をあまり聞かないのは、やはりFIAT500の個性によるところが大きいのでしょうか。
Audi A1 との比較
ボディサイズ
車種 | 全長 | 全幅 | 全高 | ホイールベース |
---|---|---|---|---|
アウディA1 | 3,970mm | 1,745mm | 1,440mm | 2,465mm |
FIAT 500 | 3,545mm | 1,625mm | 1,515mm | 2,300mm |
見ての通り、FIAT500はAudiA1に比べて、全長、全幅は一回り小さいですが、高さは7.5cm高いため、全体的に丸みを帯びたかわいい感じになっています。(FITA 500の数値は、500POP の場合)
重量
車種 | 重量 |
---|---|
アウディA1 | 1,200kg~1,220kg |
FIAT 500 | 990kg~1,050kg |
モデルにより多少差はありますが、AudiA1は 1,200kg なのに対して、FIAT500は1,000kg前後になっています。
最小回転半径
車種 | 最小回転半径 |
---|---|
アウディA1 | 5m |
FIAT 500 | 4.7m |
最小回転半径はさすがに、FIAT500のほうが小さいです。
ラゲッジルーム容量
車種 | 容量 |
---|---|
アウディA1 | 270L |
FIAT 500 | 185L |
ボディサイズが違うのでラゲッジルーム容量にはだいぶ違いがあります。
エンジン・トランスミッション
車種 | エンジン | トランスミッション |
---|---|---|
アウディA1 | 直列4気筒DOHC インタークーラー付ターボ 1.4L |
7速AT(Sトロニック) |
FIAT 500 | 直列2気筒8バルブ マルチエア インタークーラー付ターボ |
ATモード付5速シーケンシャル (デュアロジック) |
FIAT500のエンジン・トランスミッションも慣れれば楽しいのかもしれませんが、純粋に走りを考えるとやはり、AiduA1に分があると思います。
燃費
車種 | JC08モード燃費(km/ℓ) |
---|---|
アウディA1 | 17.8 |
500 1.2 Pop | 19.4 |
500 TwinAir Pop | 24.0 |
FIAT500は「直列2気筒 8バルブ マルチエア インタークーラー付ターボ」を積んだ「500 TwinAir Pop」の場合、JC08モード燃費で24.0km/Lとかなりの低燃費になっています。「直列4気筒 SOHC 8バルブ」エンジンの「500 1.2 Pop」の場合でも、19.4km/Lとまずまずの値です。
一方、アウディA1もJC08モード燃費、17.8km/Lで悪い数値ではありません。
価格
車種 | 価格 |
---|---|
アウディA1 | 273万円 |
アウディA1 Sportback | 293万円 |
500 1.2 Pop | 199万円 |
500 Twinair Pop | 220万円 |
500 TwinAir Lounge | 250万円 |
500S TwinAir | 225万円 |
500C 1.2 Pop | 243万円 |
500C TwinAir Lounge | 284万円 |
FIAT500は多彩なモデルバリエーションを取り揃えていますが、それらはほとんど装備の差なので、AudiA1がオプション化しているものに対して、FIAT500ではパッケージ化しているという感じでしょうか。AudiA1にも「A1 Sportback 1.4 TFSI Sport Package」や「A1 Sportback 1.4 TFSI S-line」などオプションをパッケージ化したモデルがあります。
総評
ポップでキュートなデザインのFIAT500。最大のライバルはMINIだと思いますが、全体のパッケージで比較するとMINIのほうがよく見えてしまいます。
FIAT500を選ぶ理由としては、やはりその唯一無二のデザインです。このエクステリアデザインがかなり気に入らなければ、あまり買う意味はない気がします。トランスミッションの「デュアロジック」もややクセがありますが、これがむしろ楽しいと感じるくらいでないと、長く付き合うのは難しいかもしれません。
最初はAudiA1と比較する車ではないのかなと思ったFIAT500ですが、よくよく調べていくと、AudiA1も趣味の領域の車なので、そういう意味ではFIAT500もライバル車になり得ると思い直しました。
しかし、セカンドカーとしてならば、あまり細かいことを考えずに買えると思いますが、実用性を考えてファーストカーとして買うのならば、アウディA1より割り切りが必要な部分は多そうです。
趣味の車と言っても、車のもつ方向性は全く違うので、最初の比較候補には上がるものの最終的な比較候補にはならないのだろうとも思います。実際自分も試乗もしてみたものの、ディーラーからの帰りには候補から外していました。
しかし、他の車にはない魅力があるのも確かで、「この車と、とことん付き合うんだ!」という気持ちで接すれば、とても楽しい車なのかもしれません。